受け入れ施設インタビュー シリーズ②

善スタッフポロシャツ 施設インタビュー
スタッフポロシャツの後ろ。車いすのように見えるロゴマークは「善」の左上

チャレンジに年齢は関係ありません。
私自身もアクティブシニア。

株式会社 善(よし)代表取締役 脇坂 康子さん

【沿革】
2013年に事業を開始。旭川市永山を拠点に訪問介護事業所、住宅型有料老人ホーム、福祉・介護タクシー事業を展開。モットーは「仲良く、明るく仕事をすること」。職員数は23名(うち65歳以上は6名)。

――介護事業を始められたきっかけを教えてください。

脇坂康子さん(以下、脇坂):自分の両親を介護したことがきっかけです。要介護5だった父母を8年介護し、ふたりとも2011年に看取りました。入退院が多く、特に母は医療行為を受けることの多い人でした。家族ならできる医療行為も、ドクターや訪問看護師から学ぶことができ、それが今役立っています。母親はみなさんに可愛がって頂きその「感謝の気持ち」が私を仕事へとかり立ててくれました。
 その後、1年ほど介護タクシーに乗っていましたが、どうせやるならと住宅型老人ホームを建てて、2013年10月に事業を開始しました。

――とてもご苦労されたことがわかりました。
 介護タクシーの仕事をされていたのですね?

脇坂:在宅介護に必要性を感じ、ホームヘルパーの資格を両親の入院中に取り、スロープ付の車を購入しました。介護タクシー事業を始めるにあたっては、60歳を過ぎてから普通自動車の2種免許を取りに行くのも大変でしたが、知人から「やる前からあきらめるな!」と叱咤されて、2種免許も陸運支局の許可も運良く取得することができました。

――事業所名が漢字一文字なのですが、その由来はなんですか?

善スタッフポロシャツ

スタッフポロシャツの後ろ。車いすのように見えるロゴマークは「善」の左上

脇坂:「善(よし)」のロゴは車いすに見えるでしょ。実は、母の名前がひらがなで「よし」と言いまして、善は戒名でもあるんですが、善悪の善ではなく「人を憎まず妬まず羨ましがらず、みんな、輪になって助け合おう」という意味が込められています。

――それにしても60歳を過ぎてから起業されるなんて、すごいですね。

脇坂:私は事業を立ち上げるなら司法書士などに頼らず、自分でやりたいと思っていました。偶然にも共感してくれる人と出会ったことで、包括支援センターなどを一緒に回って勉強しました。医師・看護師・ケアマネージャーさんらにとてもお世話になったので、少しでも恩返しをしたいとも思っていました。

――事業の立ち上げ時にスタッフを集めるのは大変だったのではないですか?

脇坂:新設事業所には人が集まりやすかったので、当時は就職希望者が多く面接するのが大変だったくらいでした。今は7年経って介護職離れも多く、なかなか人が集まりません。応募者は口コミもありますが、ハローワークや旭川市の運営する「まちなかしごとプラザ」の方のご紹介を頼りとするところです。

――アクティブシニアの方々はどんな感じで働かれていますか?

脇坂:比較的短時間の仕事が多いです。住宅型有料老人ホームというのは、有資格者が必要なんですが、やる気さえあれば働くことに年齢は関係ないと思っています。
 若くてもダラダラ仕事されるよりは、責任と自信を持って仕事に向って下さるなら…。大事なのはやる気ですから、そういう人は年齢に関係なく応援しますよ。

――アクティブシニアの方々が担っている業務はどんなものですか?

脇坂:様々ですが、厨房に入っている方は補助ではなくメインで動いてもらっている方もいます。シニアだからといって特別扱いもしません。みなさんが楽しく、入所者様のために試行錯誤して、食事を作って下さるのが嬉しいですね。

――スタッフの最高年齢はおいくつでしょうか?

脇坂:スタッフの最高年齢は72歳で、厨房を担当しています。元々ヘルパーなので、ヘルパーをお願いすることを考えています。先日入社した方は37才ですが、自分のご両親より年配の方々と向き合っているのを見るのは、ほほえましいです。
 37才のニューフェースを除く5人は65才以上ですが、しっかり頑張っています。楽しく明るい職場にして行きたいと思っています。

――職場の雰囲気はどんな感じでしょうか?

脇坂:あけっぴろげです。(笑)
 例えば、何かを壊したとしたら隠さずちゃんと報告するなど、風通しが良い職場です。ケアマネージャーやご家族、業者の方などの出入りが多いのですが、とにかく明るいので、いつも「笑い声がすごいね」なんて言われています。

――アクティブシニアに依頼して良かったことや難しかったことはありますか?

脇坂:特に年齢によって良かった悪かったというのは意識していませんが、年齢が上なら経験が豊かなのは確かですね。一方、今の若い人はシニアの方と抵抗なく働けるので、若い人は若い人なりのふるまいで良いと思います。

――まだ何も活動されていない方へのメッセージをお願いします。

脇坂:シニアと言っても現役やリタイヤ組などいろいろな方がいますが、仕事をすることで、自分の居場所が見つかるんじゃないでしょうか? 人との交流も深まりますし、視野も広がります。社会貢献でなくてもいいと思いますから、ぜひ自分の力を発揮してほしいと思います。
 それから、何ごとも体が資本ですからご自身の健康に気を付けますよね。そうするとご家族の健康にも気を付けるようになります。厨房の担当者も「もう限界だ、もう限界だ」と言いながら頑張っています。(笑) 仲間さえよければ、お互いに支え合えるんです。
 「もう歳だから」といってあきらめるのではなく、一歩でも新たな道へ足を踏み入れましょう。やってみないとわからないのですから、ダメだったらやり方を変えればいいだけでしょ。
 そして、介護の仕事で利用者さんに安心していただくためには、どんなに耳が遠くても目が悪くても声掛けが重要です。「自分でやりなさい」ではダメで、「手伝うから一緒にやりましょう」が基本です。高齢者と接するとそのうち楽しくなりますよ。

――今後、事業を進めていく上での課題はありますか?

脇坂:資格を持っている方が仕事を離れることを懸念しています。親の介護や孫の面倒をみなくてはならないといったこと、腰や膝が痛くなって無理ができないことなどで…。
 今はコロナ禍で家族の面会に制限があったり、行事ができなくて楽しみが少ないのですが、利用者さんの中から提案のあった塗り絵が利用者さんのブームになったりするなど、楽しみを見つけながら運営しています。
 健全な事業運営は、職員みなさんの協力がなければ成立しないと思っています。

(聞き手:佐藤隆)